■インク交換の方法

 

インクが出ない。出なくなった。そんな時はインクの交換時期です。万年筆のインクに、顔料インクと染料インクがあることは別のコラムでもご紹介いたしましたが、さらにインク交換の方法として吸入式、カートリッジ式、コンバーター式があることも知っておきたいポイントの一つです。

吸入式とは、ペン軸内にインクを吸入するための機能が内蔵されており、ボトルインクに入ったインクを吸入して用いる方法です。カートリッジ式やコンバーター式と比べ、多くのインクを一度に充填することが可能です。この方式は万年筆が考案された当初からの形式で、主に高価格帯のモデルで製造されています。現在の吸入装置はほとんどが回転吸入式と呼ばれる、ピストンを上下させることでインクを吸い上げる方式です。使用できるインクの週類が比較的多く、インクを出し入れする時に細かなゴミなどを同時に掃除することが可能なため、それがメンテナンスの役割も果たしています。

コンバーター式とは、カートリッジを挿す部分にコンバーターと呼ばれる吸入器を装着し、インク瓶からインクを吸入できるようにする方法です。吸入式と同様、使えるインクの週類は多く、インク装填時にペン内部を掃除することが出来る利点が。コンバーター購入などの初期費用がかかるが、インクにかかる費用を考慮に入れると長期間筆記し続けることが多い人には適した方法です。

吸入式に比べ、吸入機構が劣化した時の交換が簡単な利点があるが、インク蓄量は少なめです。

カートリッジ式は、現在最も簡単にインクの補充を行う方法として取り入れられている方式です。インクを詰めた筒状の小型カートリッジは、インクがなくなったら空になったカートリッジを抜いて、新しいものを挿すだけです。予備インクとして携帯しやすく、とても便利。ただし、小分けして製造しているのでボトルインクに比べて約2〜3割、割高となります。

 

このようにインクの交換方法はいくつかの方法がありますが、どの方法にも共通して言えることは、色を変える時や同じ色を新しく交換するタイミングで、きちんと洗浄してから交換すること。メンテナンスをきちんとすることによって、インク詰まりの原因を一つ防ぐことになります。

 

昨今はカートリッジ式が主流ですが、それぞれの特徴をよく把握した上で、ご自分の好みにあったスタイルをじっくりと検討してみて下さい。万年筆本体の色や形に一目惚れというのもありますが、デザインにこだわりがない方にはインクの色とスタイルを先に決めてから、万年筆を選ぶというのも一つの方法です。

 

余談になりますが、車も自動運転が開発され、もはやマニュアルで免許を取得する人がいるのだろうかと思う今日この頃。しかし車の運転が好きな人にしてみると、自分で操作すること自体が楽しいのだとか(ペーパードライバーの筆者には共感しづらい・・・)。

不便さの中にあっても、そのものが醸し出す何か魅力的なもの。万人にはわかりづらくとも、そんな視点も持ちつつものを選ぶのも悪くないかもしれません。

 

■インクの比較

 

万年筆のインクには、顔料インクと染料インクがあることは何度かご紹介しています。ここではこのふたつに、旧来の古典と呼ばれる古典ブルーブラックを含めた簡単な比較をご紹介します。

古典ブルーブラックとは、化学反応を利用して文字を確実に保存するためのもので、今は少なくなっていますが、公文書やカルテのような重要書類を保管するための、長期保存に適していることで知られています。

 

水に溶けないとされる顔料インクは、水に強く長期保存にも適している。溶けている染料に比べて顔料がペンの中で詰まりやすいイメージがあるのは正しい認識です。ですので本体内部でインクを乾燥させないように、取り扱いにはちょっとした注意が必要です。

染料を使った一般的なインク。こちらは多彩な色が豊富で、水に溶けるため万年筆内部での乾燥によるトラブルの心配は少ないですが、長期間使わずにカートリッジやコンバーターを装着しているとやはり不調の原因になりますので、その時はカートリッジを外して綺麗に洗浄洗浄し、乾燥をしてから保管しておくことをお勧めします。

インクをブレンドすることは同じメーカーであっても厳禁ですが、混ぜて自由に色を作ることが出来る染料インクも開発されているようです。(一例・プラチナ社のミクサブルインク)

多くのインクは水性染料を水に溶かして作られ、さらに万年筆のインクとしての性能を発揮するための’機能付与剤’を添加物として加えています。そのためメーカーごとに性質が多少異なり、特に粘度や表面張力などの違いで書き味にも微妙な差が出るようです。こちらは色々と書き味を試して、その差を確認してみましょう。

 

インクの消費期限は2〜3年が目安。直射日光や蛍光灯が当たらない暗所で保管が原則です。また、高温多湿な場所もできるだけ避け、蓋を確実に閉めておきましょう。

 

お気に入りの一本に出会えたら、お手入れも怠らないで下さいね。万年筆は書けば書くほど自分に馴染んでいく筆記具です。お手入れをすることでさらに愛着も湧いてくるものです。